香港で高層ビルの大規模火災が発生して、多くの犠牲者がでました。
本当に痛ましい事故でこころよりお悔やみ申し上げます。
ここまで大規模な火災になった原因がビルの改修工事現場で使われていた
「竹の足場」だといわれています。
香港の建設現場を見ると、
「えっ、足場が全部“竹”でできてるの?」と驚く方も多いはずです。
日本では鉄パイプの足場が一般的ですが、
香港ではいまも多くの現場で竹足場が現役として活躍しています。
なぜ竹なのか?
危なくないの?
日本とは何が違うの?
この記事では、
竹足場が選ばれる理由・安全性・歴史的背景・日本との違い
を初心者にもわかりやすく、やさしく解説していきます。
【香港の建設現場では「竹足場」が当たり前?】
香港の街を歩くと、まず目に入るのが
ビルをぐるりと覆う巨大な“竹の足場” です。
観光客の方はもちろん、
日本で建築に携わっている人でも、
「えっ、これ全部竹なの?大丈夫なの?」
と驚いて写真を撮るほどのインパクトがあります。
しかし香港では、これは特別な光景ではなく、
高層ビルの建設現場・外壁工事・商業施設の改装 など、
あらゆる場所で竹足場が使われる“日常の風景”です。
■ 実は高層ビル建築にも使われている
竹足場は「小規模工事のためのもの」と思われがちですが、
香港では 数十階建てのビルの外装工事にも普通に使われます。
高さ40〜60m級の建物でも、
ビルが竹でぐるっと覆われている姿は珍しくありません。
日本では想像しにくい風景ですが、
香港では「信頼できる技術」として長く受け継がれているのです。
■ 街の至るところで見かける“香港の象徴”
- 商業ビル
- マンションの補修
- ショッピングモールの改装
- 駅や公共施設の工事
こうした場面で、竹足場は非常に一般的です。
香港の街並みを象徴する存在と言ってもよいほど。
日本で鉄パイプ足場が見慣れている私たちにとっては、
「本当に大丈夫なの?」と不安に感じるかもしれませんが、
現地の人にとって竹足場は
“軽くて丈夫な伝統技術”として信頼されてきたもの です。
■ 外国人観光客が驚き、SNSで拡散される理由
- 「竹でこんなに高いところまで組めるの!?」
- 「鉄じゃなくていいの…?」
- 「どうやって組み立ててるの?」
こうした驚きの声が多く、
SNSでもたびたび話題になります。
なぜ“竹”が選ばれるのか?(3つの理由)】
香港では、現代的な建設機材が揃っているにもかかわらず、
いまも竹足場が広く使われています。
「なぜ鉄ではなく竹なのか?」
その理由は “実用性”と“合理性”が非常に高いから です。
ここでは、
竹足場が選ばれ続ける3つの理由をやさしく解説します。
【① 軽くて丈夫(高層ビルにも対応できる強度)】
竹は見た目以上に強く、
重量に対する強度が非常に高い素材 です。
● 実は“鉄よりしなる”ので折れにくい
竹はしなるため、
強風や揺れの衝撃をうまく吸収します。
これは高層ビルが多い香港にとって大きなメリット。
● 高さ40〜60m級の足場にも対応
日本では考えにくいですが、
香港ではこうした高さでも竹足場が使われています。
「竹=弱い」というイメージは誤解で、
軽いのに強い、そして柔軟性が高い
という特性が足場にとても向いています。
【② コストが安く、加工しやすい】
竹は香港周辺で多く採れるため、
材料費が非常に安い のが特徴です。
● 現場でそのまま加工できる
- 切る
- 伸ばす
- 曲げる
こうした加工が、鉄のような専用機材なしで可能です。
● 運びやすい・組みやすい
竹は軽いので、
多くの材料を一度に運べるほか、
高所までの持ち運びも負担が少ない。
結果として、
工期が早く済む → コストが抑えられる
という大きな利点につながります。
【③ 熟練の職人が多く、伝統工法が受け継がれている】
香港では竹足場の職人を
“竹匠(バンブースキャフォルダー)” と呼び、
高度な技術を持つ専門職として知られています。
● 紐で結ぶ「結束技術」が極めて高度
竹と竹を紐で結束して構造を作るのですが、
この技術は鉄製のクランプより早く、
強度テストでも十分な安全性が示されています。
● 技術伝承の文化が強い
香港では長年にわたって竹足場の工法が受け継がれ、
熟練職人が多いため、
施工精度も高く、信頼されています。
⭐ 竹足場は「伝統」ではなく“合理的な選択”
日本の感覚だと、
「竹=古い」「伝統的な工法」というイメージがありますが、
香港では違います。
竹は“軽い・安い・強い・加工しやすい”という合理的素材。
そして職人の技術が高いからこそ、安全に活用できているのです。
① 竹の“しなり”が強度と安全性を生む】
竹は金属のように硬くはありませんが、
そのぶん しなやかさが高く、折れにくい 特徴があります。
● 強風に強い
香港は台風が多い地域ですが、
竹足場は“風の力を受け流す”ため、
むしろ鉄足場より安定するケースもあります。
● 竹の繊維が衝撃を吸収
外部からの振動や衝撃があっても、
竹がクッションのようにしなり、構造を保ちます。
この柔軟性こそ、竹足場が長く使われる理由のひとつです。
【② 安全対策(ネット・補強・検査制度)】
“竹”だからといって無防備に組んでいるわけではなく、
香港の竹足場にはさまざまな 安全対策とルール が設けられています。
● 大きい現場では安全ネットの義務
ビル外壁全体を覆うネットが設置され、
落下物や転落を防止。
● 竹の品質検査
- 節の状態
- 曲がり具合
- ひび割れの有無
など、使用前にチェックされます。
● 竹を結束する紐も専用の素材
「プラスチック製の結束紐(タイビン)」を使い、
耐久性・結束力が高いのが特徴。
● 政府の規制・許可が必要
香港では、足場工事は有資格者が担当し、
施工や安全管理の基準が細かく定められています。
【③ 鉄パイプ足場との比較(メリット・デメリット)】
竹足場の安全性を理解するために、
日本で一般的な鉄パイプ足場と比較してみましょう。
✔ メリット(竹足場)
- 軽い ので作業者の負担が少ない
- 柔軟性が高い(衝撃を逃がす)
- コストが安い
- 加工しやすく、現場で微調整がしやすい
- 高層建築にも対応できる柔軟さ
✔ デメリット(竹足場)
- 長期の耐久性は鉄より弱い
- 日本など湿気の多い環境では劣化しやすい
- 技術者の育成が必要(職人不足の国では難しい)
⭐ 「危険だから竹足場」ではなく「使いこなせる技術と環境があるから竹足場」
香港では、
● 竹の特性
● 職人の技術
● 安全対策
● 乾燥した気候
などの条件がそろうことで、
竹足場は“安全で合理的な工法”として成立 しています。
日本では「竹=危険」と考えてしまいがちですが、
実際には香港の建築文化が長年育んできた
信頼性の高い技術 なのです。
【日本では竹足場が使われない理由】
香港では一般的な竹足場ですが、
日本ではほとんど使われていません。
これは
「日本が竹足場を採用できない環境だから」
という明確な理由があります。
ここでは、
日本で竹足場が普及しなかった“3つの背景”を解説します。
【① 建築基準法・足場の安全基準が“鉄前提”】
日本では、建設現場で使用される足場は
建築基準法・労働安全衛生法などの基準で細かく規定 されています。
その多くが
鉄パイプ足場を基準にした安全規格 となっており、
竹を使った足場は法律上の条件を満たしにくいのです。
● 日本の足場は“鉄パイプとクランプ”が前提
法律・検査・安全管理の仕組みが
すべて鉄パイプを中心に整備されているため、
別素材である竹を正式採用する道がほとんどありません。
● 法令上、竹足場の許可を得るのは現実的に難しい
安全基準をクリアするための手続き・検査だけで
コストが跳ね上がるため、実務的ではありません。
【② 日本の気候(湿気・雨)では竹が劣化しやすい】
日本は
高温多湿・雨量が多い気候 のため、
竹が劣化しやすいという弱点があります。
● 湿気が多いと竹が腐りやすい
香港と違い、日本の気候では、
竹の“長期耐久性”が保証しづらいのが現実。
● 豪雪地域では竹が折れやすい
雪の重み・積雪による凍結には竹が弱く、
全地域で使える利便性が低い。
● 年間を通じた品質維持が難しい
日本の四季では、
竹の品質を常に一定に保つのは困難です。
→ 結果として、“オールシーズン使える鉄”が主流になりました。
【③ 熟練職人の技術が途絶えている(需要がない)】
竹足場を扱うには、
高度な結束技術・組み方の習得が必須 です。
しかし日本では、竹足場の文化がもともと弱く、
戦後の建築ラッシュで
鉄パイプ足場が全国に広まったことで需要が消滅。
● 竹足場を扱える職人がほぼいない
香港は竹足場が文化として残った国ですが、
日本では技術そのものが継承されていません。
● 需要がゼロ → 人材育成も行われない
鉄パイプのほうが
- 安定供給される
- 規格化しやすい
- 安全基準と相性が良い
- 誰が扱っても手順が同じ
というメリットが大きかったため、
竹足場が広がる土壌がありませんでした。
⭐ 香港と日本は「気候・文化・法律」がまったく違う
竹足場が日本で使われないのは、
「竹が危ないから」ではなく、
日本の環境に合っていないから。
- 気候 → 日本は竹の劣化が早い
- 法律 → 鉄パイプを前提に整備
- 技術 → 竹職人文化が途絶えている
この3つの要因で、
竹足場は日本では成立しにくい工法なのです。
【文化・歴史の違いで生まれた建築スタイル】
香港で竹足場が根強く残る理由は、
“素材の特性”だけではなく、文化・歴史的背景が深く関係 しています。
一方、日本では鉄パイプ足場が当たり前。
この違いは、両国の建築文化や社会の価値観に由来します。
ここでは、“文化”という視点から
香港と日本の違いをやさしく解説します。
【① 香港は“竹文化”が根強い街】
香港や広東地域では、
古くから竹が生活の中で広く使われてきました。
- 家具
- かご
- 工芸品
- 建築資材
- 祭りや飾り
- 生活道具
竹は「安くて、強くて、加工しやすい万能素材」とされ、
その文化が建設業にも強く残っています。
● 竹の専門市場があるほど
香港には“竹市場”があり、建設用の竹が大量に流通しています。
竹足場は文化として、街に根づいた存在なのです。
【② 伝統工法が現代まで途切れず継承されている】
香港では竹足場の工法が
長い年月をかけて職人から職人へと継承されてきました。
● “危険だからやめる”のではなく、“技術で安全にする”文化
- 熟練した手結び(紐の結束技術)
- バランスの取り方
- 竹の選別
- 組み方の順番
など、細やかな技術が体系化されています。
● 伝統 × 現代建築のハイブリッド
古い技術がそのまま残っているわけではなく、
現代の建築基準と安全対策を合わせながらアップデートされてきました。
【③ 日本は“木材・鉄”中心の発展を遂げてきた】
一方で日本は、
木材建築 → 鉄骨建築 という流れで発展してきました。
- 江戸〜明治:木造建築の文化
- 昭和〜現代:鉄骨・鉄筋コンクリートの普及
- 高度経済成長期:鉄パイプ足場が一気に普及
この“鉄パイプ足場の普及スピード”が、日本で竹足場の文化を消した大きな理由です。
● 戦後の建設ラッシュで「鉄の規格化」が正義になった
- 誰でも使える
- 全国一斉に普及
- 法律との相性が良い
- 資材の大量供給が可能
この背景から、
日本は完全に“鉄パイプ文化”で進化してきました。
【④ 両国は「合理性の基準」が違う】
竹足場と鉄足場、どちらも合理的。
ただし、合理性の基準が違うのです。
● 香港の合理性
- 竹が大量にある
- 職人文化が残っている
- 気候が竹に向いている
- 高層ビルが多く、軽い素材が有利
● 日本の合理性
- 四季があり湿度が高い
- 法律の体系が鉄前提
- 職人文化が鉄に移行
- 国土全体で同じ規格を使う方が安全
どちらが正しいというわけではなく、
環境・文化・法律の違いが“建築スタイルの違い”を生んでいる のです。
⭐ 「文化の違い」を知ると、竹足場はもっと面白い
竹足場はただの建設技術ではなく、
文化・歴史・気候・社会の価値観が重なり合って生まれた“街の個性” です。
香港の街を象徴する存在であり、
日本の価値観では見えない“合理性”が詰まっています。
雑学としても、文化比較としても非常に面白いテーマです。
【まとめ|竹足場は文化の違いが生んだ合理的な技術】
香港の建設現場で当たり前のように使われる“竹足場”は、
ただの珍しい工法ではありません。
● 気候
● 資材の特性
● 熟練職人の文化
● 歴史的背景
● 街の発展の仕方
こうした複数の条件が重なり、
香港という地域にとって最も合理的な技術として受け継がれてきました。
✔ 日本から見ると「珍しい」
しかし
✔ 香港にとっては「合理的で安全な建築技術」
竹という素材は、
軽くて強く、しなやかで加工しやすく、
高層ビルが立ち並ぶ香港に非常に適しています。
さらに
- 超熟練の竹職人(竹匠)の技術
- 結束技術の高さ
- 継続的な安全対策
- 行政の許可制度
など、しっかりとした安全基盤によって支えられています。
日本との比較でわかる「文化の違い」
- 日本は湿度が高く竹が劣化しやすい
- 法律は鉄パイプ前提で整備
- 戦後の建設ラッシュで鉄足場が全国に普及
- 技術者も鉄足場中心に育成された
このため竹足場が広がらず、
“鉄パイプ文化”が確立しました。
つまり、
どちらが優れている・劣っているではなく、
「環境と文化の違い」が工法を決めている ということです。
🌟 竹足場は“香港の街を象徴する技術”
竹足場を見ると、香港の文化・歴史・合理性が一目でわかります。
旅行で訪れる人が驚き、SNSで話題になるのも、
その珍しさだけでなく“合理的な背景”があるから。
こうした視点を知ると、
香港の街並みをより深く、興味を持って楽しめるはずです。

